肌には本来、3つの因子によって保湿成分をつくり、角質層内に水分を蓄えておく力が備わっています。それが、天然保湿因子(NMF)と細胞間脂質、皮脂膜の3つの成分です。天然保湿因子(NMF)は約半分がアミノ酸で出来ており、角質層の中で水分を含んで保持する役割をしています。一方、細胞間脂質には、セラミドやコレステロール、遊離脂肪酸などの成分が含まれており、角質細胞をつないで肌の水分を留める役割です。また、皮脂膜は、肌の表面に膜を張り、水分の蒸発を防ぐ役割を担っています。この3つを合わせて肌のバリア機能と呼びます。この3つは肌を健やかに保つために欠かせない成分であり、どれを失っても肌のバリア機能は作用しません。
しかし、乾燥した環境で肌の水分が蒸発したり、皮脂の分泌量が少なかったりすると、角質層にすきまが出来て、バリア機能が弱くなってしまいます。また、加齢による皮脂の分泌量の減少や、天然保湿因子と角質細胞間脂質の減少などもバリア機能を低下させる原因です。さらに、クレンジングや洗顔などで肌を覆う皮脂膜が取り除かれ、皮脂膜が薄い状態が続くと乾燥の原因になってしまいます。こうした足りなくなったバリア機能の成分を補うことが保湿の役割です。角質細胞間脂質の主成分であるセラミドが配合された化粧水で肌に水分を補給したり、失われた皮脂のかわりに乳液やクリームなどで油分を補給したりします。
また、バリア機能の低下は、ターンオーバーの乱れとも関係しています。通常、ターンオーバーは28日周期で行われますが、乾燥によってターンオーバーの周期が早まると、未熟なままの細胞が表面に押し上げられ、肌のキメが乱れて水分を蓄える能力が低くなってしまうからです。キメの乱れた肌は見た目にもゴワゴワしています。保湿をきちんと行うことで、ターンオーバーの周期を正常に保ち、肌のキメを整える効果も期待できます。